皆さん、大変ご無沙汰しておりました。Jackです。
ここ最近になってようやく冬らしくなってきたと言いますか、急激な寒波が訪れるようになった気がします…そして、この時期となると釣りの対象となる魚種が限られてくる一方で、釣りに関するイベントが全国各地で順番に開催されていくシーズンでもあります。
というわけで、昨年に引き続いて今年もフィッシングショー大阪に行ってきたのですが、今回の記事で皆さんにご紹介するお話は新商品の情報ではなくて、以前から気になっていた「釣具で使用されているカーボン樹脂の強度」についてです。
今年の新商品の情報は他の情報サイトなどにお任せしておきますが(笑)、どうぞよろしくお願いいたします。
フィッシングショー大阪2020で聞いてみた シマノのCI4+とダイワのZAIONについて
イントロダクション
今回のお話の元々の発端は、過去に投稿したブログ記事のネタでした。
これらの記事の中で、金属加工の仕事をしている僕の友人Aに、シマノの「HAGANEギア」や「HAGANEボディ」について意見を貰ったのですが…リールのボディ素材としては金属以外にも「CI4+」という名の、カーボン繊維を織り込んだ樹脂素材があります。
でも、友人Aの専門はあくまでも金属加工で、樹脂素材についての知識や経験は当然ながらありません…ということで、このCI4+については、いつかメーカーの方に詳しいお話を聞いてみたいと思っていたのです。
そこへもってきて、フィッシングショー大阪2020が開催されていたので、シマノとダイワ(ダイワには同じようなカーボン含有樹脂素材として「ZAION(ザイオン)」という素材があります。)それぞれで、次のような質問をしてみました。
「御社のリールについて、カーボン繊維を含有した樹脂素材を用いたリールの強度は、通常の樹脂素材を用いたリールの強度を100とすると、どれぐらいの数値の強度があるのでしょうか?」
ZAIONはともかく、CI4+はリール以外(ロッドの部品等)にも使用されている素材だったりしますが…それでは、シマノ及びダイワの担当者さんの回答について、さっそく行ってみましょう!!
シマノ(CI4+)の場合
シマノのブースの隅の方に立っておられた、結構ベテランっぽい社員さんを捕まえて、先の質問をしてみたところ、かなり丁寧な回答をいただくことが出来ました。
その社員さんいわく、CI4+の基本構造としては、通常の樹脂素材の中にカーボン繊維の粉を溶け込ませて成型されるそうですが、カーボン樹脂の粉にも様々な大きさ(カーボン繊維の長さ)のものがあって、より強度を持たせたい場合には、より長く裁断されたカーボン繊維の粉を使用する必要があるそうです。
また、他社における樹脂素材へのカーボン繊維の含有量は、通常であれば数パーセント、非常に多い量では30パーセント程度のカーボン繊維を樹脂素材に溶け込ませて製品化されている例があるそうですが、シマノにおいては設計・開発部門の多大な努力のもと、非常に高い強度を持たせたものがCI4+であるとのことでした(カーボン素材の含有率など、詳細は企業秘密で公開できないそうです。)。
そういった中で、シマノではHAGANEボディなどの金属素材を用いたリールも商品化されていますが、シマノの社員さんいわく「単純に強度だけで考えれば、絶対にCI4+よりもHAGANEボディの方が上」なのだそうです。いくらカーボン繊維を織り込んだ素材であるとはいえど、樹脂製ボディでは金属製ボディほどの強度は得られない模様です。
ただし「HAGANEボディは強度においてはCI4+に勝るものの、金属製であるため樹脂ベースのCI4+製ボディよりも、どうしても重くなってしまう」そうです。これはまあ、当たり前といえば当たり前のお話です。
だから、自分の釣りにおけるリールの性能について、強度を優先するのか、軽さ(=疲労度の少なさ)を優先するのかによって、HAGANEボディを選ぶかCI4+を選ぶかといった分かれ道になってくるわけですね。
特にスピニングリールの場合、リールフット(ロッドと接続する足の部分)やローター(糸を巻き取るために回転する部分)に負荷が掛かりやすく、大きな力が加わった時には各部のパーツがねじれたり曲がったりするのですが、このねじれや曲がりが、ラインを綺麗にスプールに巻いたり、大きな魚が掛かった時のやり取りのしやすさなどに影響してくるのだそうです。
その点において、シマノでは樹脂製、CI4+製、HAGANEボディ製それぞれにおいて、素材の強度に応じたリール各部のパーツ設計を行い、問題が無く釣りが出来る性能を確保している、とのことでした。
ダイワ(ZAION)の場合
ダイワさんのブースでは、リールの展示コーナーにおられた社員さんを捕まえて質問してみたところ、その社員さんの隣にいた別の社員さんを捕まえて「彼がその分野の専門家なので、彼が回答します」と話を振られました。(笑)
で、早速その専門家の社員さんに質問してみたのですが、その方からは「弊社のホームページ上でも、まだ詳細な情報が掲載されていたかどうか覚えていないのですが、通常の樹脂製素材と比較するとZAIONの剛性は非常に高く、リールのボディ強度で言えばマグネシウム製のものと同じぐらいの強度を持っています」との回答をいただきました。
シマノのCI4+に関する情報と比べると、ダイワはZAIONについて、かなり詳細な解説をホームページ上に掲載してくれているのですが、その中から写真や図を抜粋・引用させていただきますね。
<5キログラムの負荷をかけた時の弾性の違い>
ZAIONの場合
マグネシウムの場合
一般カーボンコンパウンド樹脂素材の場合
汎用素材の場合
<ZAIONを他の素材と比較してみると>
剛性(曲げ弾性率)
耐食制
軽さ
精度
出典:グローブライド株式会社
参考URL:DAIWA TECHNOLOGY「ZAION」
うーん…これはダイワの社員さんに質問をしたのが、だんだん恥ずかしくなってきました。公式ホームページでめちゃくちゃ詳しく紹介されています。(汗)
ダイワの社員さんの説明は比較的手短だったのですが、その理由はこういうことだったんですねぇ。すみません、僕の勉強不足でした。(苦笑)
最後に
以上、フィッシングショー大阪2020でカーボン含有樹脂素材の強さについて、シマノとダイワそれぞれに質問をしてみた結果でした。
この記事を書いている段階で思ったことなのですが、シマノの社員さんの回答が「丁寧だけれども控えめ」だったのに対して、ダイワの社員さんの回答が「明快な即答」だった辺りから考えると…カーボン含有樹脂素材の分野においては、シマノよりもダイワの方が技術的に一歩先を進んでいるのではないかと感じました。
シマノの社員さんは、実のところ最後まで僕の質問そのもの(通常の樹脂素材を用いたリールの強度を100とすると、どれぐらいの数値の強度があるのでしょうか?)には答えてくれませんでしたし…ここ最近のダイワのLTコンセプトの凄まじい「軽さ」から見ても、これはひょっとしたらひょっとするのかも?(笑)
ただし、我々が勘違いしてはいけないのは「じゃあ、CI4+を用いたリールはZAIONを用いたリールに比べてダメなのか?」というと、決してそういうことではないという点です。
今回シマノの社員さんが僕に説明してくださったとおり、シマノとしては必要十分な強度・剛性を確保した製品づくりをなされていますし、メーカーが商品開発をする際には素材の性能だけでなく、デザインと製法の兼ね合いや製造コストの問題など、色々と考えなければならないことが数多くあるはずです。単純な素材の優劣だけで商品の価値を決めつけてしまうのは、非常にナンセンスですよね。
というわけで、この記事をご覧になられた皆さんは、シマノでもダイワでも好きな方の商品をご購入ください。(笑)
僕は好みの関係で、今後もシマノの商品を買う可能性が高そうですが…でも、ダイワのLTコンセプトのスピニングリール、めちゃくちゃ魅力的なんですよねぇ。